2010年08月24日

■『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬』解消の首謀者は誰だ?(医薬品ができるまで)

問題は、臨床の現場で必要性が訴えられているのに、開発されていない、いわゆる「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬」だ。
それが、ようやく、メドが立ってきた。

私も50歳であり、この業界に入って25年以上も働いているので、本音と建前があることぐらい知っているが、だからといって、「その薬は、開発してもペイしないよ」等という言葉を許すわけではない。

製薬会社の中では「患者さんの声にお応えする」などという意味のキャッチフレーズを使っている所が多い。
『アンメット・メディカル・ニーズ』(未だ満たされない医療上の必要性。患者様や医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がないこと。)に応える、等とカタカナ用語で最先端の医療ニーズに応えるみたいな、ことを言っている会社もある。

その『アンメット・メディカル・ニーズ』を、新規の化合物や新規の対象疾患に求めるのではなく、今、現在、海外では当たり前にように使われていて、日本では使えない薬を日本で使えるようにする、のが先なのだ。


ところで、どうして、こんなに急に『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬』を解消する方向で動きが出てきたのだろう?
学会からの要望というのもあるが、その前に、そもそも、誰かが旗振りをした人がいるはずだ。
それは厚生労働省の官僚やお役人かもしれないし、学会の実力者かもしれない、あるいは、患者団体の代表者かもしれない。

いずれにしても、その旗振りをした人が「一番」偉い!

解決していない問題を看過することなく、そこにこだわりを持つ。
ひとくせもふたくせもある、製薬業界を忍耐を持って説得する、交渉する(あの手、この手で)。

さ、次はきみの番だ。
きみが旗振りをするのだ。

きみの決意と、意欲と情熱さえあれば、できる。(しかも「決意」とか「意欲」とか「情熱」などは全て、無料で手に入る。)

本当に患者が困っていることを、患者本人と患者の家族の立場に立って考えることができる人が私たちには必要なのだ。
奇麗事を言うだけでなく、評論家でもなく、地味で、儲けが少なくても、本当にニーズがある薬を開発しようという強力な意志。

これから、世界を変えるのは、そういう人だ。
そして、それはきみであっていけないことは全くない。


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■薬害を学ぶ。薬害防止を潜在意識に刷り込め!「医薬品ができるまで」  


第一回「薬害教育」基礎研修講座が日本公定書協会主催で始まる。
とてもいいことだと思う。

詳細はこちらを見ていただければいい。
     ↓
平成22年12月15日(水)〜17日(金)

日本薬学会 長井記念ホール

http://www.sjp.jp/kenshu/html/files/yakuji/105/exspYAKU.pdf


この案内文にも書いてあるが、次のことが問題なのだ。

●個々の事件がどのような経緯で起こったのか
●なぜ防止できなかったのか
●得られた再発防止に向けた教訓は何か


僕が生まれてから、この50年間に有った薬害として次があげられる。

●スモン(SMON、subacute myelo-optico-neuropathyの略称、別名:亜急性脊髄視神経症)
整腸剤キノホルムによる薬害。1955年頃より発生し、1967〜1968年頃に多量発生した。


●サリドマイド (thalidomide)
1957年にグリュネンタール社から発売された睡眠薬の名称である。副作用により多くの奇形児が誕生した。
ただし、アメリカでは発生していない。
何故か?
アメリカでは1960年9月に販売許可の申請があったがFDA(食品医薬品局)の審査官フランシス・ケルシーがその安全性に疑問を抱き審査継続を行ったため、治験段階で数名の被害者を出しただけだった。
1962年にケルシーはケネディ大統領から表彰されている。

このフランシス・ケルシーさんのようなプロフェッショナルになりたくないかい?


●アンプル入り風邪薬
解熱鎮痛剤のピリン系製剤を水溶液にして飲用する形態の大衆薬製品群で、その組成上、血中濃度が急激に上昇し30人以上がショック死した。


●非加熱血液凝固因子製剤→薬害エイズ事件(1989年-1996年)
血友病の治療に用いる血液製剤がウイルスで汚染されている恐れがあるという指摘が無視され、多くのHIV感染者を出した。


●ソリブジン(1993年)
ヘルペスウイルス属に有効な抗ウイルス薬。フルオロウラシル系抗癌剤の代謝を抑制し、骨髄抑制などの重篤な副作用を増強した。
ソリブジンは、1993年9月の発売後1年間に15人の死者を出した。
その後、治験段階で投与された患者3人が死亡していたことが判明した。
また、最初の死亡例が企業に報告された9月20日から約3週間の間に、その会社の社員175名が同社株を売却していたことがわかり、インサイダー取引容疑で捜索された。


●フィブリノゲン問題→薬害肝炎(1998年-2008年)
止血目的で投与された血液製剤(血液凝固因子製剤即ちフィブリノゲン製剤、非加熱第IX因子製剤)によるC型肝炎(非A非B型肝炎)の感染被害。
投与数は約29万人であり、推定肝炎発生数1万人以上と試算している。


・・・・・・など等。

僕がモニターをやっていた時には、上記の「ソリブジン事件」があり、それを踏まえて、当時改定・検討されていた日本の新GCPでも「ほかに主治医がいる治験参加者がいた場合、その主治医に患者が治験に参加していることを連絡する」よう求めている。

その頃にも薬害再発防止策がいろいろと検討されたのだが、それでも、薬害肝炎が発生して、またまた、本年4月に「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」がまとめた
薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて」が出た。

僕たちには学習能力が無いのだろうか?

もしも、僕たちに学習能力が無いのなら、学習してもらうまで、繰り返し繰り返し、自分たち自身に学んでもらおう。
個人に確かめれば、「それは問題だ」という問題も、組織の上に行けば行くほど、問題意識が希釈されてしまう。

人間の健康回復のためにある「製薬業界」なのに、健康を害してしまう事件・事故が繰り返し、繰り返し、起こっている。
個人の倫理観は高いはずなのに(そう思うことこそが僕たちの「甘さ」なのかもしれないが)、組織としての倫理観が不足している。
誰かが、ストップ!と言わないといけないのだ。

同じこととして、人間の一人一人に聞いてみれば「戦争に反対」しているはずなのに、世界で戦火が消えた日は、一日すらない。
組織全体で見ると、個人とは別の見解になる、というこの悪習は、分野を超えて、人類共通なのかもしれない。

たとえ、そうだとしても、とにかく、製薬業界の人間は僕も含めて、一人一人の潜在意識に刷り込むほど、薬害の防止を考えるのだ。
そして、「僕/私が何か思っても、何も変わらないよ」と思わずに、「まず、自分の意識からだ」と思うことが重要だ。
「薬害を防止するシステム」が必要で、それができるまで無理だ、なんていうことは言わせない。

それができないなら、モニターなんて辞めてしまえ!




「薬害オンブズパースン会議」も見ておこう。
  ↓
http://www.yakugai.gr.jp/


これも読んでおこう。
  ↓
薬害再発防止策、土台をしっかりと(薬事日報)
http://www.yakuji.co.jp/entry5648.html


これもだ。
  ↓
『薬害予防』総合リンク集
http://www.sinbun.co.jp/kenkou/link1.html

ほかにもあるので、グーグルで(ヤフーでもいいけれど)「薬害防止」を検索してみてください。
あなたの知らないことがあるかもしれません。
そして、自分に何ができるかを考えてみてください。
お願い致します。

ホーライ



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■学生からの質問「何故、患者は治験に参加するのですか?」にタジタジする(医薬品ができるまで)

水曜日から金曜日まで大阪支店で、関西の薬学系大学の学生を集めてインターンシップを行った。
東京は8月の下旬にやる予定だ。

今回のインターンシップで最も驚いたのは、学生の「治験」に関する知識だった。
例えば治験審査委員会(IRB)の構成要件まで知っていた。
大学によっては「薬事法と治験」などという授業もあるとのことだ。

今回のインターンシップに参加した学生は全員「薬学生の5年生」だ。(薬学が6年制になった、最初の第一期生だ。)
こういう治験についてかなり『知識』として知っている学生だったが、やはり治験の本質までは理解は深くはなかった。
知識だけはあるが、本質の考えまではなかった。

例えば、僕が担当した研修に「同意説明文書」という項目があったのだが、同意説明文書の中身を理解すればするほど学生は疑問に思うことがあったらしい。
講義がひと段落した時に、一番前に座っていた女子学生が僕に聞いた「どうして患者さんは治験に参加してくれるのですか?なにかメリットがあるのですか?」と。
また、さらに別の男子学生からの質問で「医師が治験を行うメリットは何ですか?」というのもあった。

治験に参加することに関して「参加する(行う)メリット・デメリット論」では実際の治験の状況を理解することには繋がらない。
本質を突いているようで、そうでもないと言える。


しかし、学生にとっては最も素朴で最も本質をつく質問だろう。(こういう素朴で本質を突いてくる質問がでるかどうかが、研修の良しあしのひとつの指標になる。)

「何故、患者は治験に参加してくれるのか?」という学生からの質問に対して、僕はこう応じた「どうしてだと思う? 何故、患者さんは治験に参加してくると思う?」

患者さんにしてみれば「効果」も「安全性」も確立していない訳の分からない化合物を飲まされるわけだ。
場合によっては補償もされるが、それだけ、治験は「危険」を伴うものだという証拠でもある。

僕の中には当然だが、いくつかの答えらしきもがあるのだが、それは敢えて、学生に教えない。
まず、学生自身がそれを考えることから、モニターとしての自覚が生まれてくるのだ。

前述の質問に対して、現役のモニターが全員、満足な答えを出されるとは限らない。(まぁ、正解はないのだが。)

当社のインターンシップに参加したことをきっかけに「何故、患者さんが治験に参加してくれるのか」ということを学生に考えてもらうことを宿題とした。



あなたなら、どう答えますか?

例えば治験責任医師から「この治験に参加する私のメリットは何?」とか「このフェーズ2ではプラセボ群もあるよね。そんな治験に患者さんが参加するメリットを教えてよ。そうでないと、同意説明の時に困るんだよ。」と問われたときに、どう答えるのか?

治験に関しての永遠の課題だ。

これは僕たちにとって、永遠の課題だ。

患者さんは何故、治験に参加してくれるのだろう? 
まだ薬なのか毒なのか分からない、そんな治験薬を自分の体で試験する、文字通り患者さんは「命をはって」治験に参加してくれる。

モニターは「命をはって」仕事をしているだろうか?


23、4歳の学生に刺激を受けて、こんなことを考えたのでした。

東京でのインターンシップで、どのような刺激を受けて、僕がどう成長するか、今から楽しみだ。



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